ヒトに感染する病気「狂牛病(BSE)」

まだまだ狂牛病の余波による食牛肉離れが収まらない中、
スクレイピーに関しても 注目が集まっています。
改めて、狂牛病に関して正しい知識を持っておきたいと思いこのページを作りました。

 
【狂牛病とは?】 狂牛病は正しくは牛海綿状脳症という病気で、1986年に英国で発見されました。
狂牛病はヨーロッパ諸国やカナダなどで見られますが、圧倒的に多いのは英 国で、世界の98%以上とされ、はっきりと症状が出ている牛だけでも15万頭も 見つかっているそうです。
この病気にかかった牛は脳を冒され、運動失調などの神経症状を起こしてし まいます。 海綿状脳症と呼ばれるのは、感染した牛の脳を顕微鏡で観察すると、無数の小 さな穴が見え、この様子がスポンジに似ていることからです。
潜伏期間は2〜8年で、発症後2週間から6カ月で死亡すると言われていま す。

《原因》 ウイルスより小さな、プリオンと呼ばれる特殊な蛋白が病原体と言われてい ます。
プリオンは外界から体内に侵入したものではなく、体内のニューロンで作ら れ、その細胞膜表面に存在する蛋白質です。

プリオンのすべてが悪い物ではなく、正常なものと異常なものがあります。 異常なプリオンだけが感染性を持っているので、プリオン=病原体とは言え ません。異常なプリオンは、どの牛も持っている正常なプリオン蛋白質が異常化した ものです。プリオンは非常に熱に強く、破壊するのには133度、3気圧、20分以上で高温 処理することが必要とされている、厄介な病原体です.  

狂牛病の感染の原因は、感染した牛(発症前の潜伏期間中も含む)の神経組 織や内臓を含んだ飼料を食べたこととされています。

狂牛病に似た病気が幾つかあります。 それは羊や山羊に発病するスクレイピー*最後で触れていますミンクの伝達性脳症、ヒトのクロ イツフェルト・ヤコブ病などです。これらの病気は「プリオン病」と総称されています。

《人間への感染》 牛と同じように脳がスポンジ状になり、歩行障害や痴呆などが出る、致死性 痴呆症「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」との関連が疑われています。  
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病とは、脳が萎縮するのが特徴で急速に痴 呆が進行し、多くは1、2年で死亡する難病です。  

英国における新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、1995年から2001年ま でに100人以上の死亡が確認されています。これは、感染した牛の脳や眼を習慣的に食べたことが原因ではないかと考え られています。
病気を引き起こす異常な構造を持つプリオンを食べると、体内で増えて中枢神経が侵されます。

《狂牛病が確認された国》
厚生労働省医薬局食品保健部の発表
イギリス、アイルランド、ポルトガル、スイス、フランス、ドイツ、スペイ ン、 ベルギー、イタリア、オランダ、デンマーク、チェコ、リヒテンシュ タイン、ルクセンブルク、ギリシャ、日本  

オーストラリアやニュージーランド、アメリカ、オーストリア、フィンラン ド、スウェーデンは狂牛病の発生が無い国であることが、国際獣疫事務局や EU欧州委員会の狂牛病の専門諮問機関により世界的に証明され、公表され ています。  

《牛のどの部位が危ないのか?》
世界保健機構(WHO)での感染危険度の分類です。
【高感染性】 脳、脊髄、目
【中感染性】 脾臓、扁桃、リンパ節、回腸、近位結腸、脳脊髄液、下垂体、副腎、硬膜、 松果体、胎盤、延位結腸
【低感染性】 末しょう神経、鼻粘膜、胸せん、骨髄、肝臓、肺、すい臓
【感染性なし】 骨格筋、心臓、乳腺、牛乳、血塊、血清、腎臓、甲状腺、唾液腺、唾液、卵 巣、子宮、精巣、胎児組織、胆汁、骨、軟骨組織、結合組織、毛、皮膚

《肉骨粉とは?》 牛、豚、鶏などから食肉を取り除いた後の骨や臓器など、残った原料を加熱 処理し、油脂を取り除き、圧縮乾燥させて細かく砕いたものです。  
肉骨粉は大豆かすや魚粉など他の蛋白源に比べて割安で、家畜も好んで食べ る飼料のため、トウモロコシや大豆油かすなどと混ぜて配合飼料として家畜 に与えていました。 高蛋白のうえ、カルシウムなども豊富だが、狂牛病の感染源とされ、狂牛病 に感染した牛が原料として使われている肉骨粉を食べた牛は感染するとされ ています。 そのため、欧州連合(EU)は牛や豚、鶏などに与えることを全面禁止して います。

豚や鶏の場合は、感染牛を肉骨粉として食べても狂牛病を引き起こすことは 無いとされています。  

《日本では》 日本は2001年1月まで、欧州連合(EU)から動物性飼料を輸入していました。 そのため日本でも狂牛病が発生する可能性があると考えられていました。 そのような時、日本に狂牛病が発生する可能性があるとした報告書が欧州連 合(EU)から出されました。 それは2001年6月の事で、日本で最初の狂牛病が報告される前の事です。

EUの報告書の内容は、日本はすでに狂牛病が確認されているフランスと同 じ評価であり、日本で狂牛病が発生しても、全くおかしくないとの事だった のです。 政府は報告書を無視?し、そして結局は狂牛病が発症してしまいました。 この対応は、薬害エイズと同じ道を歩んでいるように思われても仕方があり ません。

《英国では》 狂牛病は鼠や猫、猿などで実験的に感染が確認されていま す。
1990年、英国の動物園で骨肉粉飼料を与えられていたライオン、トラ、 ピューマ、チーターなどのネコ科の肉食動物やレイヨウなどの草食動物ま でもが感染していたことが明らかになってます。 さらに狂牛病にかかっているとみられる飼い猫が発見され、ペット動物に も感染する恐れがあることがはっきりした。 この事実に英国政府は、1996年8月すべての動物に対し骨肉粉の使用を禁 止する措置をとってます。 以後、英国、ノルウェー、リヒテンシュタインで約100件の猫への感染が 報告されている。
《人獣共通感染症》
東大名誉教授山内先生の
人獣共通感染症に関する
講義録の中からです。
英国での牛以外の動物での海綿状脳症の現状として、猫の感染を報告し ています。 輸入動物(反芻動物18例、輸入猫6例)と、英国の動物園で生まれて輸 出された輸入猫2例。 国内産猫で70の確認例、犬では見つかっていない。 ノルウェーでは国内産猫の1例がある。
***スクレイピー***
語源はScrape:ひっかく、こする。発病した羊は神経が冒され、はげしいかゆみの ために身体を柵などにこすりつけて毛が抜けるのが特徴で、ここからこの名がついた。*以下はラジオ番組から得た情報です。
スクレイピーは18世紀以来、ヨーロッパを中心として羊の間で流行し 、畜産に大きな被害を及ぼしてきた、人とは200年以上ものつきあいのある病気。

スクレイピーは,BSEと同じく脳の組織がスポンジ状になる病気であるが、 スクレイピーは、BSEの原因とされるプリオンとは異なるものと考えられている。

スクレイピーが人へ感染する恐れは低いと認識されている。理由は、 人間はスクレイピーの羊と200年以上接触してきているが、これまでに羊から人に 病気がうつった可能性について、世界各国で検討されたが、その可能性を示唆するよ うな結果は得られていない。羊の脳を好んで食べる習慣のある 地域の人々の新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発症率と、そうでない地域の人々それとの 比較で差がなかったことなど、羊から人への種の壁を越える可能性は考えにくいとみな されている。

しかし恐ろしいのは、スクレイピーの羊なのか、BSEの羊(BSEは羊に感染する) なのかを見分けることが現段階でできない、ということ。そしてBSEの羊を食べた人 が新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症するかどうかは現段階では不明であること。
しかし、もし 人への感染が明らかになれば、イギリスを例にとると、BSEの 母羊の産んだ子羊にもBSEは移行することから、人の新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 の発症率は、牛のBSEからのそれの3倍にもなるという。

現在、日本では羊に関しても生後18ヶ月以上のものは、食肉として市場に出回る前に 検査をし、陰性のもののみを食用にしている。
EUでは、BSEの懸念から羊の脳、脊髄を食用として用いることを2000年に禁止している。
イギリスでは牛のBSE対策に手一杯で、現在羊に関しては何の検査も対策も昂じていない。


                         *動物病院の情報誌Nyanとかシロより転載許可受
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